幾何計算って何?(外積編)

はじめに

こんにちは、meviyのPMIチームで開発をしています、横田です。

前回は幾何計算の内積について解説と活用例についてお話しさせていただきました。引き続き、今回は外積の活用例について紹介させていただきます。

外積とは?

内積が数値を返すのに対し、外積の計算結果は新しいベクトルになります。
2つのベクトルAとBに対して、外積A×Bは下記のように定義されます。

向き

この新しいベクトルの向きは、元の2つのベクトルに直交します。
その方向は「右手の法則」に従って決まります。
(Aを人差し指、Bを中指、外積の結果得られるベクトルを親指として示せます)

外積(向き)

大きさ

外積で得られるベクトルの大きさは、元の2つのベクトルAとBが作る平行四辺形の面積に等しくなります。

外積(大きさ)

今回は、この向きを求められる部分を活用した例をご紹介しようと思います。
概念の説明だけではイメージがつきにくいかと思いますので、PMIでの活用例を通じて、どのように役立てているか見ていきましょう。

※ PMI(Product Manufacturing Information: 製品製造情報) については過去の記事で概要をご紹介していますので、合わせて読んでいただけると嬉しいです。

techblog.dt-dynamics.com

活用例

多くの寸法は、基本的に3軸のいずれかの軸平面に沿った方向に表示されます。
一方で、いずれの軸平面にも沿わない斜めの面にPMIを表示したい場合があります。

例えば、下図の「⌀6 ↧10」は斜めの面に開いた穴を示す、座標軸に対して斜めに表示されるPMIになります。

斜め穴PMI

このとき、PMIを面上のどの向きに置くかを決めるには、文字列右方向と上方向のベクトルが必要になります。

PMIの向きについて

PMIのRight方向は、座標軸のうちY軸方向に沿っているため、こちらをそのまま利用できます。
一方でUp方向はどの軸にも沿っていないため、何らかの方法で求める必要があります。
そこで外積の出番です。

斜面の法線方向により決まる向き

図のように、穴のある面の法線方向を用いてみます。 ベクトルA=斜面の法線方向、ベクトルB=Y軸方向として見立てると、ベクトルA×B=斜面方向になります。
(よかったら右手の法則で試してみてください!)

このように、既存のベクトル(法線と座標軸)の外積を用いることで、モデル上に直接存在しないPMIのUp方向のベクトルを求めることができます。

おわりに

今回は幾何計算の例として外積について紹介させていただきました。

外積内積のように結果が数値で得られるのではなく、新しいベクトルそのものが結果となるため、最初は少し抽象的に感じるかもしれません。
ですが、慣れてくるとどういう情報があれば欲しい方向が得られるかという謎解きやパズルのような面白さもあります。

引き続きPMIチームで用いられる幾何計算の例についてご紹介できればと思いますので、今後ともぜひよろしくお願いします!