DTダイナミクス代表取締役社長の道廣です。 2025年10月30日に開催された Google Cloud AI Agent Summit 2025 Fall にて、製造業DXプラットフォーム「meviy」と、その開発を支えるAIエージェント活用の取り組みについて登壇しました。 本記事では、登壇内容の要点をサマリーとしてまとめています。詳細については、下記の動画および資料リンクもあわせてご参照ください。
製造業のDXは、「デジタル化するか否か」の議論は収束し、問われているのはいかにして構造的な非効率を壊し、スケールする仕組みを作るかです。
私たちが向き合ってきた課題は極めてシンプルでした。 設計者が3D CADで部品を設計した後、調達フェーズに入った瞬間、時間が止まる——。 図面を送り、見積を待ち、差し戻しを繰り返す。 このアナログな往復運動こそが、製造業全体の生産性を縛ってきた本質的なボトルネックです。
3Dデータをアップロードするだけで、時間の概念を変える
その構造を根底から書き換えたのが、製造業DXプラットフォーム「meviy(メビー)」です。
meviyは、設計者が作成した3D CADデータをWebにアップロードするだけで、
AIが形状を解析し、製造可否・価格・納期を即座に提示します。
重要なのは「即時見積」ではありません。
その3Dデータから加工機のプログラムまで自動生成し、工場とデジタルで直結している点です。
結果として、最短1日での出荷が可能になる。
これは単なる効率化ではなく、設計と製造の間に存在していた時間という摩擦を取り除く構造改革です。
プロダクトを支える、内製 × 高度技術の融合
このプロダクトを支えているのが、ミスミグループからスピンオフした株式会社DTダイナミクスです。 私たちは「テクノロジーで時を操る」というミッションのもと、以下の技術領域を一気通貫で内製してきました。
これらを統合し、プロダクト開発に最適化された組織を構築しています。
2019年の日本展開を皮切りに、meviyは欧州・米国・アジアへと急速にグローバル展開しています。
その取り組みは評価され、ミスミグループは「DX銘柄」にも選定されました。
次の壁:開発は「エンジニアだけ」では最適化できない
内製化により、開発生産性は約3倍に向上しました。しかし、そこで新たな課題が見えてきます。
開発プロセスは、エンジニアだけで完結しない。 事業、PM、セキュリティ、運用——。
一部を最適化すると、別の場所に必ずボトルネックが生まれる。
この構造的課題に対し、活用できないかと取り組んだのがAIエージェント開発でした。
AIエージェントを「ツール」ではなく「組織の拡張」にする
私たちのコンセプトは明確です。
業務効率化のためのAIツールは、買うのではなく、迅速に自作し、組織全体で共有する。
Gemini CLI や Vertex AI を活用し、 現場の課題に直結したAIエージェントを高速に実装・展開する文化を作ることを試みました。
事例1:開発プロセスを“可視化”するエージェント
Jira・GitHubのAPIを横断的に分析するエージェントを構築しました。
これにより、以下が可能になっています。
- ボトルネック工程の即時把握
- リリースノートの自動生成
- 定常的な進捗・品質分析の自動化
これは「感覚で議論する開発」から「事実で語る開発」への転換です。
事例2:属人知を形式知に変えるエージェント
セキュリティ仕様や運用ルールなど、これまで「あの人に聞かないと分からない」知識をエージェントに学習させました。
過去の問い合わせ履歴やドキュメントをRAGとして構築し、誰でも対話形式で専門知識を引き出せる状態を実現。問い合わせ対応工数は大幅に削減されています。
事例3:仕様理解を加速するマルチエージェント
上流工程で最も時間を奪うのは「仕様理解」です。そこで、以下のエージェントを組み合わせました。
- 検索クエリを自動生成するループエージェント
- 結果を要約し回答するサマリーエージェント
仕様書群を横断的に解釈可能とし、PMや開発者は過去の意思決定を即座に理解することを目指しました。またGoogle Agent Development Kit (ADK)のループエージェントのフレームワーク活用も経験値として積むことができました。
数字が示す、現実的なインパクト
これらの取り組みにより、作成したツールの開発はGemini CLIで簡単にコーディングでき、かつCloud Runにデプロイしてすぐに他者と共有という意味では、ツール開発時間は短縮できます。また、定常分析業務にも大きな効率化を図ることができました。
- ツール開発時間:最大 80%削減
- 定常分析業務:50%削減
AIエージェントは「実験」ではなく、すでに「戦力」だと感じています。
さらなる進化へ:「meviy Marketplace」
meviy以外にも挑戦の幅は広がっています。 3Dプリンティング、射出成形など、多様化する製造ニーズに応えるため、「meviy Marketplace」 を立ち上げました。
これは、部品を作りたいユーザーと加工パートナーを直接つなぐプラットフォームです。
チャットによる柔軟な仕様調整を可能にし、従来のmeviyとは違った、より幅広いものづくり体験を実現します。
AIエージェントで、開発そのものを進化させる
私たちは、AIエージェントを使って「プロダクトを作っている」のではないのですが、プロダクトを生み出す“開発そのもの”を進化させている状態です。
製造業の未来は、優れたアルゴリズムだけでも、強い現場だけでも実現できません。その両者をつなぐ開発プロセスこそが、競争力になります。
AIエージェントと共に進化するこの道は、製造業においてもスタンダードになってくる未来を見据えて、meviyの開発現場においてGemini CLIは組織利用できる環境を整え、展開し活用し始めています。Google Agent Development Kit (ADK)の活用も今後活性化していきたいと考えています。