話題の分割キーボード Cornix LPを使ってみた

はじめに

こんにちは。DTダイナミクスでバックエンドエンジニアをしている眞神です。

かれこれ5年以上、分割キーボードを愛用しており、これまで様々なモデルを試してきました。肩や手首への負担が少ない分割キーボードは、長時間のデスクワークに欠かせない相棒です。

そんな中、2023年末頃からキーボード界隈を賑わせているのが、今回ご紹介する「Cornix LP」です。本記事では、この話題の分割キーボードを実際に使ってみた感想と、その魅力について詳しくレビューします。

結論から言うとCornix LPに対する私の満足度は高く、基本褒めちぎっている記事になります。

Cornix LPとは?

Cornix LP(以下、Cornix)は、Jezail Funder Studioが設計した、薄型(ロープロファイル)の無線分割キーボードです。自作キーボードコミュニティで人気の「Corne」レイアウトをベースに、誰でもすぐに使える完成品として提供されているのが大きな特徴です。

Xで話題になったこともあり、エンジニア界隈では特に以下のレビュー記事で記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。


cornix画像

購入モチベーション

もちろん、Xで話題になっていたのを見て「お、良さそうだな」と気になっていたのが、きっかけの1つではあります。

でも、購入の最大の決め手はそこではなく、私が長年抱えていた「テンティング角度」への小さな不満でした。

今まで使ってきた分割キーボードは、傾斜をつけるテンティングの角度が低めにしか設定できないものが多いという不満がありました。「もうちょっと高くできれば、手首が楽になるだけじゃなく、首こりや肩こりも改善されるのに」と思っていたのです。

そんな中で、Cornixは一体型のスタンドでかなり柔軟に角度調整ができると知り、気づいたときには購入ボタンをポチっていました。

気に入った点

1. 柔軟なテンティング調整

まず、購入の決め手にもなったテンティング機能です。これは期待以上に素晴らしいものでした。

そもそも、机に手のひらをペタッとつけた状態は、実は腕の骨がねじれた不自然な状態(専門的には「前腕回内」と言うそうです)にあります。この状態で長時間タイピングを続けることが、手首や肩への負担の一因とされています。

分割キーボードの「テンティング」は、キーボードの内側を持ち上げて角度をつけることで、腕のねじれを解消し、より自然な「握手をする時」のようなニュートラルな形でタイピングを可能にする機能です。

Cornixの優れた点は、このテンティング機能が一体型のスタンドとして、非常にスマートに実装されていることです。角度は 6°、12°、18°、24° の4段階から選べ、工具なども不要で簡単に切り替えられます。

角度調整の様子の画像

私は最も角度の高い 24° で使用していますが、これが驚くほど快適です。手首がすっと楽になり、購入モチベーションであった肩こりの悩みも軽減されたように感じています。

2. Bluetooth接続による完全コードレス化

以前の有線分割キーボードには、左右を繋ぐケーブルの長さという物理的な制約がありました。肩を開けるメリットはありつつも、「もっと広く置きたいのに届かない」という小さなストレスを感じていたのです。

その点、CornixはBluetoothによる完全ワイヤレスです。左右ユニット間もPCとの接続もケーブルレスになったことで、ポジションの物理的な制約は一切なくなりました。その日の体調やデスク環境に合わせて、一番楽な場所にキーボードを置けるのは最高です。

また、デスクからケーブルがなくなることで、デスク周りの美観が向上し、スッキリとした環境で作業できる点も大きなメリットです。

3. 「既製品」ならではの手軽さと、高級感の両立

多くの高性能な分割キーボードが自作(DIY)を前提とする中、Cornixは「完成品」として提供されています。正直に言うと、私はかなりの面倒くさがりで、はんだ付けはできれば避けたいタイプ。そんな自分にとって、買ってすぐに使えるこの手軽さは、何よりの魅力でした。

また、特にテンティングのような負荷がかかる機構について、メーカー自身が品質を保証してくれる安心感も、既製品ならではの大きなメリットだと感じます。

そして、Cornixが既製品としてすごいのがボディの高級感。ボディにはCNC切削加工によるアルミニウム筐体が採用されており、手に取るとずっしりとした重みと、ひんやりとした金属の質感が伝わってきます。この圧倒的な高級感も、所有欲を大いに満たしてくれます。

私が所属するDTダイナミクスではmeviyという機械加工部品の見積もり・調達サービスを開発しています。仕事柄、精密な金属加工のコスト感を理解しているだけに、この価格でこの品質の筐体を実現していることには脱帽です。

4. どこでも「いつもの環境」を実現する優れた携帯性

以前愛用していた分割キーボードは、自宅で使う分には満足していましたが、毎日オフィスに持ち運ぶにはサイズが少し大きいという悩みがありました。その結果、家とオフィスとでキーボード環境が異なり、微妙な感覚の違いに小さなストレスを感じることもありました。

その点、Cornixは40%キーボードで持ち運びが非常に手軽です。ノートPCと一緒にカバンにさっと収まるので、家とオフィスのキーボード環境を完全に統一できました。どこでも全く同じ感覚で作業に集中できるのは、想像以上に快適です。

なお、そもそも40%キーボードって何?と思った方は以下を参照ください。

5. Vialによるキーマップの柔軟性

Cornixは、Webブラウザ上のGUIで直感的にキーマップを書き換えられる「Vial」というファームウェアに対応しており、これが強力なカスタマイズ性を実現しています。

Vialの公式ページ

専門的なビルド作業は不要で、ブラウザからキー配置やマクロの登録などをリアルタイムに設定できます。そのため、気軽に試行錯誤しながら自分だけのキー配列を作り込むことが可能です。

レイヤー機能も非常に強力で、特定のキーを押している間だけ数字や記号のレイヤーに切り替える、といった設定も簡単に行えます。

具体的な私のキーマップ構成や、試行錯誤の過程については、後の「私のキーマップ構成」の章で詳しくご紹介します。

気になった点

もちろん、これだけ褒めちぎってきたCornixにも、いくつか「人によっては気になるかもしれない」と感じた点があります。

1. 見た目以上の重量

コンパクトな見た目とは裏腹に、手に取るとずっしりとした重みを感じます。これは高級感のあるアルミ筐体を採用しているためで、打鍵時の安定感にも繋がっています。個人的にはこの重みも気に入っていますが、携帯時の軽さを最優先する方には、少し気になるかもしれません。

2. 「40%キーボード」への適応

私は以前75%配列の分割キーボードを使用していたため、数字や記号キーが物理的に存在しない40%配列への移行には、正直なところ少し慣れが必要でした。

しかし、この制約は「ホームポジションから指を動かさずに、いかに効率よく入力するか」というキーマップの試行錯誤を促し、結果的により快適なタイピング環境を構築するきっかけにもなりました。この点については、次の「私のキーマップ構成」の章で詳しく触れたいと思います。

私のキーマップ構成

さて、ここからは私が実践しているVialを使ったキーマップのカスタマイズについてご紹介します。

キーマップ共有サイト「CornixHub」の恩恵

具体的な設定をご紹介する前に、「CornixHub」というサイトに触れておきます。これはCornixユーザーが自身のキーマップを共有できるプラットフォームです。私もキーマップを構築する上で参考にさせていただきました。様々な設定が公開されており、キーマップ作成のヒントになります。

キーマップ構成の試行錯誤と現在の方向性

購入から一週間ほどは、Vialで実現できることを一通り試し、ほぼ一日1回はキーマップを更新するほど夢中になっていました。

様々な試行錯誤を経て、現在は以下の設計方針に落ち着いています。

ホームポジションを極力崩さない。そして3つ以上のキーを同時に押すことなく、全ての操作を完結させる

この方針を実現するため、Enter,Spaceを親指で押下できるキーに設定したり、数字キーは右手側にテンキー配列で設定し、ファンクションキーもそれに倣う形で設定しています。

この設計思想を支えるのが、Vialの強力な機能である「Macro」「Tap Dance」「Combos」です。

Vialの機能を活用した具体例

1. Macro:定型操作をワンタップで

Macroは、一連のキー入力を1つのキーに割り当てる機能です。例えば、Macで多用するスクリーンショットのショートカット(Cmd + Shift + 3)のような定型操作をマクロとして登録し、ワンタップで実行できるようにしています。

2. Tap Dance:1つのキーに複数の役割を

Tap Danceは、同じキーをタップする回数(シングルタップ、ダブルタップなど)によって、入力する文字や機能を切り替えられる機能です。

私はこの機能を記号入力に応用し、Shiftキーを押す手間を省いています。例えば、あるキーをシングルタップで[、ダブルタップで{が入力されるように設定することで、プログラミング中の思考の流れを妨げません。

3. Combos:複数キーの同時押しでコマンド発動

Combosは、2つ(またはそれ以上)の特定のキーを同時に押すことで、別のキー入力やコマンドを実行する機能です。

私は、dfの同時押しでIMEを英語に、jkの同時押しで日本語に切り替えるように設定しています。これにより、ホームポジションから手を動かすことなく、スムーズな言語切り替えが可能になりました。

実際のキーマップ構成

前述の方針に基づいて作成した、現在の私のキーマップをご紹介します。レイヤーは0から4までを主に利用しています。

レイヤー0:基本レイヤー

基本的なアルファベットと、使用頻度の高い一部の記号、そしてカーソルキーを配置しています。ここから各種レイヤーにアクセスします。 レイヤー0の画像

レイヤー1:記号入力レイヤー

プログラミングで多用する記号を網羅的に配置しています。Tap Danceも活用し、Shiftキーを押すことなく、ほぼ全ての記号が入力できるようになっています。 レイヤー1の画像

レイヤー2:操作系レイヤー

Vimライクなカーソル移動(HJKL)や、スクリーンショットのマクロ、Bluetoothの接続先切り替えといった、操作系の機能をまとめています。 レイヤー2の画像

レイヤー3:数字入力レイヤー

右手側にテンキー配列で数字を配置しています。これにより、数値の連続入力がスムーズに行えます。 レイヤー3の画像

レイヤー4:ファンクションキーレイヤー

F1からF12までのファンクションキーを、数字と同様にテンキー配列ライクに配置しています。また、IntelliJ IDEAのショートカットを快適に利用するため、左手側にはCtrlShiftなども配置しています。 レイヤー4の画像

これらのキーマップはCornixHubで公開しています。より詳細な設定に興味がある方は、ぜひ以下のリンクからご覧ください。

CornixHub 公開中のキーマップ

まとめ

本記事では、分割キーボード「Cornix」について、その魅力と私のキーマップ活用法を詳しくご紹介しました。

正直なところ、購入当初は期待半分、不安半分でした。しかし、Vialによるキーマップのカスタマイズを繰り返すうちにその奥深さに魅了され、今ではすっかりこのキーボードが病みつきになっています。

本製品は予約販売が基本ですが、長年の分割キーボードユーザーから、これから挑戦したい方まで、広くおすすめできる一台です。

この記事が、あなたのキーボード選びの参考、および分割キーボードへの興味の入口になれば幸いです。

では良いキーボードライフを!